こんにちは、ボイストレーナーAKIRAです。
今回は、『基本的な発声の仕組み』について説明しますね。
歌を歌ったり声を出していく上での私たちの楽器が「喉」です。
楽器演奏者が自分の楽器を知るように、自分が扱う声の仕組みを知っておくと、
ボイトレの練習効果がアップしやすくなったり、
自分の大切な喉を守ることやよい声で話すこと、歌を上手く歌うことに繋がったりします。
ボイトレをする上でもきっと役に立つと思うのでしっかり読んでみて下さいね。
それでは、早速、発声の仕組みを勉強していきましょう!
目次
声のコントロール
声というのはとても抽象的で感覚的なもののように考えられていますが、実際には全て理屈があります。
その理屈通りに動かせば、自分の意志で声をコントロールすることが出来るのです。
声のコントロールが上手くなればなるほど、あなたの声の出し方、歌い方はどんどん変わってきます。
“どこをどう動かすと”“どういう声になるのか”しっかりイメージをしながらボイトレを行うことで
上達のスピードが上がったり自分の喉をよりコントロールしやすくすることが出来るでしょう。
この発声のメカニズムを“自分の体”“自分の喉”に置きかえてイメージしてくださいね。
声が生まれる場所、(せいどう)
私たち人間はどこから声を出しているのでしょうか。
生まれてから当たり前のように声を出しているのでなかなか考える機会はないかもしれませんが、
私たちの声というのは首(喉)の中にある「声帯」が作っています。
喉の中には「食べ物や飲み物を胃の中に送る道」と、
空気を肺に流し込んだり肺から出したりする、つまり「呼吸をするための息の通り道」の二つがあります。
飲食物が通る道を「食道」、呼吸をするための空気の通り道を「気管」と呼びますが、
声帯は、この気管の入り口にある「喉頭」という場所に存在しています。
胸の中には空気を出し入れしているポンプの役割を持つ「肺」があります。
その肺から送り出された息が声帯にかかって、その息が動力になって声帯が振動して声が生まれます。
よくボイストレーニングのイメージとして、
「お腹から声を出しましょう」というフレーズがとても有名なのですが
実際にはお腹から直接声が出るということはありません。
(これはボイトレ経験者などでもよく間違えやすい点なので注意しましょう)
『声は必ず喉の中から生まれる』ということを覚えておいて下さい。
声帯から生まれた音は、イラストにあるように首の中を通って口と鼻から出ていきます。
この口や鼻から出てきた音というのが、私たちが普段聴いている「声」なのです。
この声帯に息がかかると音が出るのですが、
声帯から生まれた声は喉の中、口の中、鼻の中を通って響きながら外に出て行き、
こうして私たちがいつも耳にしている声となります。
流れとしましては、
私たちの声の出る仕組み
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喉頭の中にある2枚の声帯に息がかかって音が生まれる
↓
咽頭
↓
口腔、鼻腔
↓
口と鼻から声が出ていく
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声を出す時はこのような順番で音が出て広がっていきます。
この声の通り道の事を専門用語では「声道」と呼びます。
声帯の詳細
声帯は咽頭と気管の間にある喉頭(こうとう)の中に存在しています。
もう少し正確に書くと、声帯の位置は喉仏の裏側、またはそのほんの少し下辺りです。
声帯という二枚のヒダは前方は左右がくっついていて、
後ろ側を小さな筋肉の力で近づけたり離したりして開閉します。
声帯は内側から「粘膜層」「粘膜固有層」「筋肉層」の3層構造になっていて、
発声する時には左右の粘膜部分が触れ合います。
声帯はその形によってどんな高さの音が出るのか、どんな質の音が出るのかに決まりがあります。
実際はもっと複雑なのですが大まかに2つの動きを紹介すると、
例えば声帯は出す音の高さによって伸縮するのですが、
前後に伸びて張った時には高い声が出て、逆に前後が弛んでたるんだ時には低い声が出ます。
また、左右に2枚ある声帯がしっかり閉じている時はクリアで張りのある声になり、
閉じずに声帯の間に少し隙間がある場合は息の漏れたようなかすれた声になります。
このように伸縮と開閉の動きを行います。
また声帯の触れ合う表面部分やその周囲が緊張していると硬い音になり、リラックスしていると柔らかい音になります。
歌が上手な方はこのような伸縮、開閉などの動きを行いながら、声の高低、強弱、質感を変えています。
声帯を自由にしなやかに動かせるようになることで、あなたも思い通りの歌が歌えるようになるでしょう。
声を響かせる場所、共鳴腔(きょうめいくう)
喉の中、首の中、口の中、鼻の中の空洞を『共鳴腔』と呼びます。
これは、声帯から生まれた音が共鳴する(響く)場所であることからそう名付けられています。
この共鳴腔はそれぞれ喉頭腔(こうとうくう)、咽頭腔(いんとうくう)、口腔(こうくう)、鼻腔(びくう)と呼びます。
この空洞の形によって声の音色や声量が変化していくので、
魅力的な声を作りたいのであればこの共鳴腔の形をある程度自由に動かせるようになると良いでしょう。
基本的には共鳴腔は広い方がより声は響き、声量も増幅されます。
逆に共鳴腔が狭いと細い声になったり声量も小さめになります。
ちなみにモノマネが得意な方は様々な声を出すことができますよね。
たくさんの声を使い分けているのを見て凄いと思った方もいると思いますが、
あれは声帯や共鳴腔を動かすのが得意なため、色々な声質を作ることができるのです。
呼吸を上手く利用しながら喉頭内部や気管の方まで広げようとすると、
首の中全体が広がるため声帯のリラックスにも繋がります。
いつも意識するように心がけてみましょう。
もっともっと詳しく知る、声について
Q.どうすると2枚の声帯は振動するの?
A.2枚の声帯はお互いに触れ合うことで振動しますが、それには条件がいくつかあります。
2枚の声帯はただ触れ合っていれば勝手に振動するというわけではなく、
肺から出てくる息が動力源となって振動を発生させるので、まずは息の流れがないと震えません。
また、声帯は乾いていると左右お互いが寄り合わなくなり震えないという性質を持っています。
ですので声帯をきちんと鳴らすためには、口頭内部に湿気が必要なのです。
乾燥していると声が出しにくい、乾燥が喉に良くない
という話は聞いたことがあるかもしれませんが、その良くない理由の一つはここから来ています。
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Q.声を出していない時は声帯はどうなっているの?
A.声を出していない時は、左右の声帯は基本的にお互い離れていて開いています。
もし声帯が閉じてしまっていると息の通り道が塞がってしまうということなので、これでは呼吸が出来ませんよね。
ですので声を出す時は声帯は合わさっていますが、声を出さない時には声帯は離れています。
この開閉の動きを私たちは、生まれてから日常的にほぼ無意識レベルで操作しています。
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Q.声帯はどのぐらいの速さで振動するの?
A.Hz(ヘルツ)という言葉を聞いた事ありますか?
音の高さを示す値によく使われるんですが、これは「1秒間に音源となる振動体が何回振動するか」というのを示す数値でもあります。
例えば440Hz(よく楽器のチューニングの基準で使われる『ラ』の音)というのは、
「1秒間に、ある物体が440回振動した時に生まれる音」という意味になります。
つまり440Hzの高さの声を出している時は、
“声帯が毎秒440回振動している”ということになります。
1秒間に440回というと、もう目には追えないほどのスピードですよね。
ちなみに1オクターブ上がるとHzは2倍になるので880回、
逆に1オクターブ下がるとHzは半分になるので220回の振動になります。
男女によっても声の高さは違いますが、声の音域から考えていくと
男性の平均的な声域は100~500Hz
女性の平均的な声域は200~800Hz
このぐらいではないかと考えられます。
この数字を見ても分かるように、声を出している時はいつも声帯はすごいスピードで触れ合っているのです。
発声が良くなかったり長時間声帯に負荷をかけると声帯は炎症したりしますが、
このヘルツの法則で考えていくとすると
高い声だと声帯炎はより起こりやすくなり低い声では起こりにくくなるということになります。
ですので高い声を出す方はより注意しなければならないし、
男女で見ると女性はより注意しなければならないでしょう。
例えば男女で1オクターブ話し声の音域が違う二人がいたとすると、
この二人の声帯の振動数は単純計算で約2倍の差になるため
男性が60分話した時の負担が女性だと30分で同じ負担が来る計算になります。
(厳密には声帯表面の負担は喉頭や声帯の緊張度など様々な要因で変わりますが)
そのため高音を出している方、出したい方はただ叫んだり大声で出すだけでは声帯を痛めてしまう可能性が高くなるため、より良い発声を手に入れて負担を極力軽減することが大事になります。
このような傾向があることも知っておきましょう。
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Q.言葉はどこで作られるの?
A.私たちの言葉は、舌と前歯、口の形が主に作っています。
よく滑舌のトレーニングで口を大きく動かす練習がありますが、
言葉の発音というのは口ではなく主に舌の運動が大事になってくるため、
口をそんなに大げさに動かさなくてもはっきりと発音することは出来るのです。
この辺については、
「言葉がはっきり聴き取れるな~」と思う方が、
口をいつも大きく動かしているわけではないのを見ると分かると思います。
腹話術師の方はほとんど口を動かさなくてもはっきりと言葉を発音できますよね。
あの滑舌は舌の動きを人並み以上にしっかり作ることで可能にしています。
滑舌を良くしたい場合は“舌の柔軟性”“舌の動きのスピード”を鍛えていきましょう。
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Q.体が小さいけれど大きな声は出せる?
A.声の声量がどのくらい出せるかというのは、
体の大きさで決まるものではありません。
声帯がしっかり合わさっているかどうか、
声帯が緊張せずによく鳴る状態であるかどうか、
そして共鳴腔が広く声が響く状態であるか。
これらのトータルでその人の声量は大体決まります。
体は小さいけれど声量があるという方もいますよね。
実は声量と体の大きさはあまり関係がないのです。
左右の声帯をいかに緊張させずに閉じを保ち、そして息を通していくか、
などいくつかのポイントを押さえて効率の良いトレーニングを行うことで
声量はどんどん増やしていくことができます。
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Q.高い声になるとのどが苦しくなるのはなぜ?
A.声帯は速く振動すればするほど高い音が出ます。
逆にゆっくり振動すればするほど低い音が出ます。
高い声を出すためには声帯の振動を速めなければいけないのですが、
負担なく高い声を出すには声帯は2つの動作が必要になります。
1つは声帯をピンと伸ばして張る動作。
もう一つは引き伸ばした状態で左右の声帯を上手く合わせる閉鎖の動作です。
声帯は伸ばして張力を増すと速く振動しやすくなりますが、
伸ばすために喉仏を大きく挙上させてしまったり喉頭周囲の力を大きく使う場合があります。
また声帯は張ると傾向として開きやすくなり、閉鎖の動きもより必要になります。
声帯は閉じが悪い状態だと息をたくさん使わないと声が出なかったり、
がんばって閉じようとして首周りの力を強く使って出そうとしてしまいます。
これがのどの苦しさや疲れやすさ、また「強い声じゃないと高い声が出せない」の元になっています。
できるだけ効率良く声帯周りの力を使えるようになってくれば、
それに応じて高い声は楽に出せるようになってきます。
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Q.低い声や高い声はボイストレーニングで伸ばせる?
A.はい、伸ばせます。
よく生まれつきで決まってしまうという方もいますが、それは多くの方にとって正しくありません。
声帯が100%コントロールできている状態での話となります。
多くの方は低い声も高い声もボイストレーニングで伸ばすことができますよ。
低い声は喉頭や周辺をよりリラックスさせて声帯もたるませ、
そして高い声は声帯を進展させて左右の閉じを作っていけば音域は広がっていきます。
ただ音域の細かい広げ方にはコツがあるので、
それをきちんと正しく行えるかどうかで伸び方が大きく変わります。
まとめ
・声は声帯という楽器が作っている。
・生体から生まれた音は共鳴腔で響きを増し、口と鼻から出る。
・声帯や共鳴腔を上手く動かすことで自分の声を自由に変えることができる。
・声を出している時は声帯はとても速いスピードで振動している。
・高い声であればあるほど声帯に負荷もかかりやすくなる。
終わりに
今回の基本的な発声の仕組みについて、いかがでしたでしょうか。
皆さんが当たり前のように出している声は、実はこのような仕組みになっています。
もちろん歌は基本的に芸術でありアートですから
理屈ばかり考えていても良い歌が歌えるわけではありません。
でも自分があと一歩レベルアップしたい時や
自分の声を最高の状態に保つための
きっかけになってくれることもあるのです。
あなたの理想の発声、理想の歌に近づけるためにお役立てください。
細かい疑問、質問、もっともっと歌を上手に、素敵に歌いたい、などあれば、体験レッスンやオンラインレッスン、書籍もありますので、お気軽にお申し込み下さいね。
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