こんにちは、ボイストレーナーAKIRAです。
今回の記事では、誰でもすぐできる、
超カンタンな『腹式呼吸のやり方』についてご説明しますね。
ボイトレを習ったことがない方でも、
「歌う時は腹式呼吸で!」という言葉を知っているくらい
今では腹式呼吸は歌やボイトレにおいて非常にメジャーな単語になっています。
実際に呼吸が安定している方が声も出しやすいし歌も歌いやすくなるものです。
さて、この腹式呼吸ですが、なんだか難しそうに捉えられていますが
それ自体は全く難しいものではなく、
やり方さえ分かってしまえば誰でもすぐに出来てしまうものだったりします。
皆さんもこの記事で腹式呼吸のやり方やメリットなど、その知識を一通り覚えて
いつも深い呼吸でしっかり発声したり歌を歌えるようにしていきましょう。
目次
呼吸とは、腹式呼吸とは
まず初めは呼吸についての簡単な解説になりますが、
呼吸というのは私たちが生きていく上で欠かせない、常に連続して行っている意識的、無意識的運動の一つです。
意識している時には呼吸の状態を自分で調整することができますが、仮に意識がない時であっても基本的に止まることはないものです。
普段私たちが呼吸をする時には、
肺をふくらましたり、しぼませたりしながら、口と鼻から空気を取り込んだり吐き出したりしています。
肺がポンプのような役割をすることによって、呼吸を行っているのです。
肺に空気を取り込みふくらませたり、しぼませたりする際には、私たちは基本的に肺周辺の筋肉を中心に使います。
そして呼吸をする際には通常肺周辺だけでなくそれ以外の場所の筋肉も同時にいくつか使っているのですが、
その呼吸時に主に動かしている部位によって、腹式呼吸であるか胸式呼吸が定義上分かれています。
以下に簡単に示すと、
・肺の筋肉と横隔膜やお腹回りの筋肉を使う → 腹式呼吸
・肺の筋肉と胸、首周りの筋肉を使う → 胸式呼吸
というような分け方になります。
腹式、胸式どちらの呼吸であっても肺周囲の筋肉をメインに動かすことは間違いないのですが、
呼吸法によってそれ以外の使っている場所に多少の違いが出てきます。
例えばボイトレや呼吸法などで、
肩が上がると良くない呼吸だ、と言われたりすることがありますが、
これは「肩が上がる=首周りの筋肉が動いている」と捉える考え方から
肩が上がる呼吸を胸式呼吸として判断しています。
なぜ、胸式呼吸よりも、腹式呼吸がいいのか
図の通り、肺の前部、上部、左右は肋骨(ろっこつ)に囲まれています。
胸部周辺には心臓や肺などの生命活動を行う上で欠かせないとても重要な臓器がいくつも存在しているため、
胸部はそれらの臓器を守るために周囲を骨が囲ってガードしているわけですが、
多くの方が行っている胸式呼吸では、胸やその上部、肋骨や鎖骨などの骨で囲まれている場所から肺を動かそうとします。
これは呼吸の効率が悪く、筋肉の運動エネルギーを使う割にあまり息を出し入れする量が多く取れないのです。
それにより胸周辺や首周りの筋肉を強く動かしてしまうことで首周辺の緊張にもつながり、喉のリラックスを邪魔してしまいます。
つまり喉の力みを誘発しやすい呼吸でもあり、これがあることから胸式呼吸は歌においては良くない呼吸だと考えられています。
一方、腹式呼吸では肺の真下にある横隔膜を動かして呼吸を行います。
肺の真下と横隔膜の間には骨などの「肺の動きを邪魔するもの」が特に存在していないため、
何かに邪魔されることなく肺を膨らませたり萎ませることができ、胸式呼吸と比べるとたくさんの息を効率良く出し入れできます。
そして、純粋な腹式呼吸では首周りの筋肉をほとんど動かさないので、喉が緊張しないという、発声する上での大きなメリットもあります。
これが私が皆さんに腹式呼吸を推奨している最大の理由です。
5秒でできる腹式呼吸のやり方
さて、腹式呼吸がよく分からない、難しいと考えている方もいると思いますが、ここで誰でもすぐにできる腹式呼吸のやり方を教えたいと思います。
それは、
「おしりの穴を閉めておく」
ただこれだけです。
これだけであなたは腹式呼吸がしやすい状態になっています。
とても簡単ですよね。
腹式呼吸の確認方法
①腹式呼吸の簡単な確認方法です。
まずは何も力を入れずに息をずーっと吐き続けてみましょう。
そうすると、ある一定の量までは何も問題なく吐けると思いますが、それ以上を吐こうとしていくと段々胸に痛みが出てきませんか?
これは、肺の空気をしぼませて押し出すために胸周りの筋肉や肋間筋(肋骨の間にある筋肉)を強く使ったため、肋骨などへ負荷がかかり骨が痛みを感じたということです。
この時に、「肺の中にどのくらい息が残っている状態で胸が痛くなったのか」を覚えておきましょう。
もしもこの段階で痛みが無く多くの息を吐けている場合は、あなたは既にある程度腹式呼吸ができているということになります。
②次に、おしりの穴を軽く締めてもう一度息を吐いてみましょう。
どうでしょうか。
先ほどより息を多く吐いてもそんなに胸に痛みを感じないのではないでしょうか。
もしおしりの穴を閉める前と閉めた後で
閉めた後の方が痛みを感じずに息の吐ける量が多くなっていたのであれば、
閉めた時には胸周りではなく横隔膜をより多く動かして肺の空気を押し出すことができたということになります。
つまり先ほどよりも腹式呼吸が出来ていたと言えます。
○胸に痛みを感じなくなる理由
この息を吐いた時に起こる胸の痛みとはいったい何なのでしょうか。
肋骨の周りにある呼吸筋は呼吸の際には必ず働き力が入りますが、この筋肉をある一定以上動かすとその筋の付着部である肋骨などに負荷がかかった時にこの痛みが出てくるのです。
ただ肺の真下にある横隔膜は肋骨に付着しているわけではないためいくら動かしても肋骨に負荷はかかりません。
横隔膜をどれだけ使ってたくさんの肺の中の空気を出し入れしてもそれだけでは胸に痛みは起こらないのです。
ですのでもしたくさん息を吐いても胸に痛みを感じなくなったということであれば、
それだけ“横隔膜がしっかり動いている”という証拠になります。
この腹式呼吸は、胸式呼吸か腹式呼吸か、0%か100%かという極端なものではなく、
目には見えないですが実際には20%、30%、50%・・・など実践できている度合いが違っていたりします。
これが100%に近づくほど横隔膜がよく働いていると考えていけばいいのですが、
どんどん腹式呼吸を100%に近づけられるように、
より横隔膜がしっかり動きやすくなるような呼吸を意識してみるといいでしょう。
○その他に呼吸について注意すること
ここで呼吸をする上での上半身の姿勢について一つ言及しておきます。
体が猫背になってしまっていると肋間筋などの呼吸筋が動かしにくくなるため少し呼吸がしづらくなります。
また、猫背は歌う際の姿勢としてもあまり美しいものではありません。
それよりも胸は少し張っているくらいの方が呼吸もしやすいし見た目的にも良いでしょう。
PCなどの使用により猫背が癖になっている人が増えているとの話も聞きますが、より効率の良い呼吸法を獲得するために、鏡で見たりしながら自分の姿勢も気を付けてみてくださいね。
更に歌に活かすコツ
ボイストレーニングをしている方でたまに誤解があるのですが、
基本的に発声する際に息をどんどんたくさん吐こうとする方がいます。
ところがこれはあまり良い事ではなく、
実は「特別な例外を除き発声や歌唱の中ではあまりたくさん息を吐かない方が良い」のです。
歌う際の息は無理にたくさん吐くものではなく、少しずつ温存しながら効率的に使うものです。
発声する際に声帯を閉鎖、振動させやすくするのに理論上最適な息の量があるのですが、
そこでは息はかなり少ない量で良いという結論が出ています。
発声の息の量についてはまた別の記事で書いていくとして、
歌う際には下記の2点が大事になってきます。
・歌っている時の息の量の配分
・どのタイミングでどれだけ吸うかという計算
いつでも腹式呼吸が出来る状態を身に付けたら、
次に、まず、“いかに少ない量の息で効率良く声を出していくか”を考えていくといいでしょう。
それらをこなしていけば、あなたの声は声量もコントロール能力もスタミナも上がり、もっと自由に楽しく、多くの人に届く素敵な歌が歌えるようになります。
・ちょっとストップ!間違った腹式呼吸
ボイストレーニングなどで「腹式呼吸をする時は肺の中にある息をすべて吐ききりましょう」という考え方もあります。
しかし現在の最新の発声理論では、これはあまり良くない呼吸法として考えられています。
その理由について簡単に解説しますが、
人の体や脳は常に酸素を必要とするため、
肺のポンプは生理的に全て吐き切れるようには作られていません。
全部吐き切ろうとしてもある程度の量の空気は肺に残るようになっています。※この残った息の量を残気量と言います。通常の人で1000~1500ml程度。
息を全て吐き切るということは、それだけ肺を強くしぼませていくということになるのですが、
肺をよりしぼませようとすればするほど、どうしても肺を縮めるために肋間筋や胸周りの筋肉を強く収縮させなければならなくなり、その結果肋骨への負担が大きくなるのです。
毎回呼吸の度に息をすべて吐き切ろうとする強引なボイストレーニングが一昔前に流行ったのですが、
それを長期的に行ったことが原因で、肋骨に負荷がかかり過ぎて疲労骨折をしてしまう、という人も続出しました。
そしてこれは現在でもまだ多くの人が実践している呼吸法なのです。
腹式呼吸そのものは発声することにおいてとても効果的で素晴らしいもので私も推奨しているのですが、
力任せな呼吸法に関しては、私が過去に実践したり見てきた経験からもあまりオススメ出来ません。
強く息を吐くことが良くない理由は他にもあり、
ここでは簡単に述べるだけにしておきますが
息をあまり強く吐き過ぎると声帯の閉鎖を呼気がこじ開けてしまい声門閉鎖不全が起こってしまったり、
また声質が重くなったり声のコントロールが不自由になったりなどの弊害が起こります。
結論を述べると、別に無理に息を吐ききろうとしなくても腹式呼吸を行うことは出来ますし、自由な発声を目指すなら息はあまり必要以上に強く吐くべきではないということになります。
『力まかせで強引な息の吐き方をしなくても、楽に安全に良い声は出せる』ということを覚えておいて下さい。
ちなみに例えば息を深く吐く、無理なく吐き切ろうとするという程度では
通常肋骨にはそんなに強い負担はかかりません。
あくまで肋骨にダメージが来た時のサインが『肋骨の痛み』であり、
「胸に痛みを感じるほどの無理な呼吸」を長期的に継続しないように注意しておけば問題はないでしょう。
ですので息をたくさん吐くことに対して過度に怖がったり不安を抱える必要もありませんのでご安心くださいね。
まとめ
・腹式呼吸は喉をリラックスさせたり、肺を効率良く動かして使える息の量を増加する効果がある。
・胸式呼吸よりも腹式呼吸の方が歌を歌うには適している。
・腹式呼吸はおしりの穴を軽く閉めれば誰でも出来る。
・歌で使う呼気の量は基本的に少ない方が良い。無理にたくさん吐かないこと。
・歌の呼吸はあくまで自然に。力任せに強引に吐いたりして行うべきものではない。
終わりに
今回の腹式呼吸の方法、メリットについての記事はいかがでしたでしょうか。
歌っている最中の呼吸が楽になったり安定していると、身体的にも精神的にも余裕が生まれ、良い歌が歌いやすくなります。
歌で表情を付けたい場合などにはその動作の一つとして息の流れをコントロールして自由に動かせる必要がありますが、それも呼吸が腹式になり安定することでより行いやすくなることでしょう。
あなたが今よりさらに良い歌を歌えるようになるためにも、是非この腹式呼吸は身に付けておきましょう。
これからあなたの理想の発声、理想の歌に近づけるためにこの記事をお役立てください。
細かい疑問、質問、もっともっと歌を上手に、素敵に歌いたい、などあれば、体験レッスンやオンラインレッスン、書籍もありますので、お気軽にお申し込み下さいね。
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