こんにちは、ボイストレーナーAKIRAです。
「声変わりの時期は歌わない方がいい」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
特に思春期を迎えるお子さんを持つ親御さんや、声変わり中の学生さんからたまにこの質問をいただきます。
結論から言うとこの話には一理ありますが、決して「歌ってはいけない」というわけではありません。
むしろ声変わりの前や声変わりの時期にきちんとボイストレーニングで声を鍛えておくと、声変わりした後の声のコントロールがしやすかったり、ボイトレのやり方によっては高音域の変化が緩和されます。
自分の声と向き合い正しい知識を持ってケアすることは、将来の歌唱力向上に大きく影響するでしょう。
この記事では、声変わり中に歌うことのメリット・デメリットや注意点ついて、ボイストレーナーの視点から詳しく解説していきます。
声変わりとは
まず声変わりのメカニズムについて簡単に説明しましょう。
声変わりは主に思春期に起こる体の変化の一つで、喉にある声帯が成長し、長く太くなる現象を指します。
声帯は肺から送られてくる空気に振動することで音を生み出しています。
弦楽器の弦をイメージしてみてください。
弦が長くて太いほど低い音が出ますよね。
人間の声帯も同じで、声帯が成長することでそれまでよりも低い声が出るようになります。
これが一般的に「声が低くなる」と感じる声変わりの正体です。
声変わりは、男性で約1オクターブ、女性で約2~3度ほど声のキーが下がると言われています。
声変わりの時期は人それぞれ
声変わりの時期は個人差が大きいです。
一般的には男性は12歳から16歳頃、女性は11歳から14歳頃に始まるとされていますがこれらはあくまで目安です。
早い人では小学生から始まり、遅い人では高校生になってから始まるケースもあります。
私の生徒さんでも中学一年生で声変わりをほぼ終えていたような子もいます。
声変わりが始まると音域が下がるだけでなく、声が不安定になったり、突然裏返ったり、かすれたりすることがあります。
これは声帯が急激に成長しているため、脳が新しい声帯の長さに適応しきれていないからです。
ちょうど新しい楽器を手にしたばかりで、思うように弾きこなせない状態に似ています。
声変わりのサイン
声変わりが始まったかどうかは、先ほど挙げた年齢と以下のいくつかのサインで判断できます。
- 声が突然裏返る、かすれる
- 高音が出しにくくなる
- 喉に違和感がある、声が詰まる感じがする
- 以前のように大きな声が出せなくなる
風邪をひいたなどもないのにこれらの症状がしばらく続くようであれば、声変わりが始まった可能性が高いです。
あれ、以前歌えてた歌が歌えなくなった!
小中学生でミュージカルや歌をやっている場合に、声変わりがきっかけで以前歌えていた歌が歌えなくなったり高音域が出なくなって役に抜擢されなくなってしまうということもあります。
これは高音域を広げるボイストレーニングで解消できることも多いのですが、親や周りの子、劇団のボイストレーナーもそれを知らなかったりします。
本人もそれを知らずに無理に歌って喉を傷めたり、せっかく才能があっても悩んでしまって諦めてしまう例もあるのです。
声変わりに対して正しい認識をしよう
「声変わり中に歌うのは喉に負担がかかるから良くない」という考え方があります。
しかしこの考え方は半分正しく、半分間違っています。
【正しい点】
声変わりは声帯に起こる急激な変化ですが、本人は気づかないこともあります。
この時期に声変わり前と同じ高音を無理に出そうとしたり、喉を酷使するような歌い方は避けるべきです。
あまり無理をすると声帯に炎症を起こしたり、声帯結節の原因になったりするリスクがあります。
無理な歌唱は将来の声の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
【間違っている点】
「声変わり中は歌うのをやめるべき」という考えは、行き過ぎた解釈です。
むしろ適切な方法で歌うことは、新しい声帯の使い方を学ぶ良い機会になります。
声変わり中は高音が出せなくなったり、声のコントロールが難しくなったりします。
ですがこの新しい声帯の使い方を少しずつ練習しておくことで、声変わり後のスムーズな移行を助けることができるのです。
声帯は使わないと筋肉が衰えたりコントロール能力が低下するので、この時期に歌うことをやめてしまうとマイナスの方が大きいです。
声変わりの時期をどう過ごすかで、将来のあなたの歌声は大きく変わってくるでしょう。
声変わり中に歌うことのメリットとデメリット
声変わり中に歌うことには、それぞれメリットとデメリットがあります。
これらを理解することで、リスクを避けながら声の成長を促すことができます。
【メリット】
- 新しい声帯の使い方を学ぶ機会になる:声変わりで声帯が長くなると、それまでの歌い方では通用しなくなることがあります。新しい声帯に合わせた発声方法を少しずつ探っていくことができます。
- 音域の変動に対応する練習になる:声変わり中は声が不安定になりがちですが、この状態の声帯に慣れていくことで声のコントロール能力が向上します。
- 声への意識が高まる:自分の声の変化を日々観察しケアすることで、声の健康に対する意識が高まります。これはプロの歌手にとっても非常に大切な資質です。
【デメリット】
- 喉を痛めるリスクが高まる:もし無理に高音を出そうとしたり大声を出したりすると、まれにデリケートな声帯を傷つけてしまう可能性があります。
- 変な癖がつきやすい:声が不安定な時期に無理な歌い方を続けていると、無意識のうちに喉に負担のかかる発声の癖がついてしまうことがあります。
- 精神的なストレス:思うように声が出せないことや以前のように歌えないことで、フラストレーションを感じることがあります。
声変わり中に歌う際の注意点
デメリットを回避し、メリットを最大限に活かすためには、いくつかの注意点を守ることが大切です。
- 無理な高音は避ける:声変わり中は声の音域が下がります。無理に以前のキーで歌おうとせず、自分の声が出しやすいキーの曲を選びましょう。
- 大声で歌わない:喉に負担をかけないようにしながら適度な声量で歌いましょう。
- 裏声を鍛える:地声で無理をするのではなく、裏声をしっかり鍛えて地声と裏声を繋いでいくと高音域が楽に発声できます。
- 喉に違和感を感じたら休む:喉に痛みや違和感を感じたら歌うのをやめて、喉を休ませましょう。
- ボイストレーナーに相談する:自分で判断が難しい場合は、信頼できるボイストレーナーに相談しましょう。あなたの声の変化に合わせて、適切なアドバイスと練習法を提案してくれます。
歌わない方がいいなら合唱部や軽音楽部は存在しないはず?
「声変わりの時期は歌わない方がいい」という意見が正しいなら、学校の合唱部や軽音楽部が存在するのは良くないということになり、教育上問題があることになってしまいます。
しかし実際は全く違いますよね。
答えはシンプルです。
「危険なのは慣れない声帯で無理な歌い方をするからであって、歌うことそのものが危険なのではない」
ということなのです。
合唱部や軽音楽部の顧問の先生の多くは、声変わりの時期にある生徒の声を理解し、無理のないように配慮して指導しています。
たとえば声変わり中の生徒にはその日声が出しやすい音域のパートを割り振ったり、声帯に負担をかけないような発声法を指導したりします。
また、そもそも部活動の目的は歌唱技術の向上だけではありません。
仲間と一つの音楽を作り上げる楽しさや、協調性を学ぶことも重要な要素です。
歌うことを止めてしまうとこれらの貴重な経験を失うことになります。
あまり無理をしないことが重要
「声変わり中は無理をしないこと」が大切ですが、これは声変わりと関係なく通常の歌手にとっても同じです。
喉に違和感がある時や体調がすぐれない時に無理をして歌うと、声帯を傷つけてしまいますよね。
声変わりの時は、声変わりが起こっていることが分からず今までのキーを無理して出そうとしてしまうことが調子を崩す一番の原因なのです。
声変わり中の声帯は、日々変化しています。
先日まで出せた高音が今日は上手く出せない、ということもあります。
これはあなたの発声が悪くなったわけでも才能がないわけでもなく、単に声帯が成長しただけです。
ここで無理をして高音を出そうとすると、喉を締め付けたり変な力が入ったりして、喉に負担をかけてしまうことがあります。
これが続くと声帯に負担がかかり、声帯結節やポリープといった音声疾患の原因になることもあるので注意が必要です。
【具体的な行動】
- 自分の声域をたまに確認する:スマートフォンの録音機能を使ったりして、自分の声が出せる音域を把握しましょう。
- 発声練習を怠らない:負担の少なく正しい発声練習は、声帯の柔軟性を保ち、声変わり後のスムーズな移行を助けます。
きちんと声変わりを理解して指導できるトレーナーがいるとベスト
声変わり中に歌うことが問題になるのは、無計画な自己流の練習によるものがほとんどです。
正しい知識を持ち適切な指導の下で歌うのであれば、声変わり中の子どもがどれだけ歌っても喉を痛めることはありません。
むしろ声変わり中に正しい発声法を学ぶことは、将来の歌唱力に大きく貢献します。
声変わりを理解したボイストレーナーの重要性
すべてのボイストレーナーが声変わりのメカニズムや、声変わり中の声のケアについて深く理解しているわけではありません。
もし声変わり中のあなたがボイストレーニングを受けるなら「声変わりや喉の仕組みについてきちんと理解し、指導できるトレーナー」を選ぶことが重要です。
そのようなトレーナーは、以下のようなポイントを重視して指導を行います。
- 正しい音域拡大を指導できる:地声で高音を出すための無理な練習は避け、ミックスボイスの習得など喉に負担の少ない練習をメインに行います。
- 声帯の変化に合わせたメニューを組む:その日の声の状態に合わせて、練習メニューや音域を柔軟に変更します。
- 声変わり中の声を見据えた指導:声変わり中の声域や声質を予測してそれに合わせた発声法を指導します。
適切な指導を受けることで、声変わりという時期はその後の「成長のチャンス」に変えることができます。
まとめ
声変わりは誰にでも訪れる自然な体の変化です。
それは決してネガティブに捉えるべきではありません。
無理な歌い方をすると喉を痛めるリスクがありますが、それは声変わりは関係なく誰でも同じです。
負担を減らし地声と裏声を一つに繋ぐことを適切な方法で行えば、将来の歌唱力向上につながります。
もし声変わり中で悩んでいる方がいたらご相談ください。
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